本稿は、逐次比較型ADC(SAR ADC)において「データシート通りに使っているのに性能が出ない」という現場で頻発する課題を、AIN(アナログ入力)およびREF(基準電圧入力)の駆動インピーダンスという視点から、体系的に解説した3部構成の技術資料だ。
前編では、SAR ADCの入力はサンプリング・コンデンサーが直結しているという基本構造に立ち返り、LSB/2精度まで充電するために必要な理論条件を整理する。中編では、18ビット・5MSPSのAD7960を用い、AIN駆動抵抗を段階的に変化させた実測により、わずかなインピーダンス差がSNRや歪み特性に与える影響を、FFT結果から明らかにする。後編では、REF入力に焦点を移し、基準電圧の駆動インピーダンスやデカップリング条件が、ADC全体の性能にどのように影響するかを検証する。
SAR ADCの性能を規定する入力回路設計の要点と設計上の限界条件について、理論と実測の両面から言及している。