デジタルマルチメータをはじめとする計測器では、測定値を細かく表示できるだけでなく、入力に対する直線性や、温度・時間が変化しても測定結果を安定して保つことが求められる。ADC製品を用いて7.5桁の精度を実現するためには、その性能だけでなく、電圧レファレンス、アンプ、抵抗ネットワークを含むシグナルチェーン全体で誤差を抑える必要がある。
本稿の前半では、そのために必要な条件を整理した上で、高直線性のSAR ADCを中心とする回路構成を取り上げ、各部品に起因する誤差が測定精度に及ぼす影響を理論的に分析する。後半では、その分析に基づいて構築した高精度シグナルチェーンのノイズ、直線性、温度係数、24時間精度を測定し、電圧レファレンスやアンプの違いによる結果も比較することで、理論値と実測値の整合性を検証する。
また、実際の計測器では入力保護や複数の測定回路によって不確実性が増すことにも触れながら、電磁波測定キャリブレータ、3相交流標準器、高精度データロガーへの応用例を示す。7.5桁の精度を実現する上で、回路全体をどのように構成し、評価すべきかを解説する。