鮮明で高度なグラフィックス機能を搭載した携帯端末の普及に伴い、ビジュアルコンピューティングの重要性が高まっている。この分野の第一人者、NVIDIAが提供するTegra SoCの新製品Tegra X1は、強力なNVIDIA Maxwellアーキテクチャと256GPUコア、64ビットCPU、比類のない4Kビデオ機能に加え、従来製品よりも電力効果に優れた高い性能を必要とするモバイルや車載アプリケーションに理想的だ。
製品開発にあたり、NVIDIAのビデオチームは、メンターのCatapultを使用した高位合成フローを導入した。当時NVIDIAは、「通常14ヶ月かかる作業を9ヶ月で終えなければならない」という設計課題と、限りなく短納期で「4K HEVCビデオデコーダを8ビットから10ビットカラーへリターゲットしなければならない」という課題を抱えたプロジェクトに直面していた。この両方の問題を解決したのが、高位合成という手法である。
本稿では、「あり得ない」状況下での開発を成功させたNVIDIAの事例を紐解きながら、高位合成の有効性について解説する。